You ain't heard nothing yet!

ある社会科講師の旅の回想録

You ain't heard nothing yet!(お楽しみはこれからだ!)

アルル

 マルセイユからどこに向うか悩んだが,海岸沿いを東に向い,ニース,カンヌ,モンテカルロといったコートダジュール(紺碧海岸)はあこがれの地でもあった。中学時代によく聞いた歌にシャリーンの『愛はかげろうのように』という曲がある。かなり大人な曲だが,その二番にこんな歌詞がある。

Oh I've been to Nice and the isle of Greece

While I sipped champagne on a yacht

I moved like Harlow in Monte Carlo

and showed 'em what I've got

(ああ ニースやギリシャの島々にも行ったわ

ヨットでシャンパンを飲んだりもした

モンテカルロのジーン=ハーロウのように

持てるものを披露したりもしたわ)

 


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 あぁ,なんて優雅だろうと,思春期の私は海外を夢見た。しかし街が人を選ぶことだってある。イタリアのヴェネチアやコートダジュールは,多分そんな所ではないかと貧乏学生の私は思ったりもした。

 というわけで訳で次はアヴィニョンに行くことにした。アヴィニョンはマルセイユから鉄道でたった1時間のところにある。途中アルルという町があり,立ち寄ってみることにした。

 アルルの駅を市街地へと南に歩くとすぐにラマルティーヌ広場,ここにゴッホの「黄色い家」があった。あったというのは現存しないからだ。パリのモンマルトルで弟テオとともに住んだアパートを訪れたが,その後ゴッホが移り住んだのがアルルの「黄色い家」であった。当時はカフェも隣接していてカフェ・ド・ラ・ガールといった。フランス語で「駅(ガール)のカフェ」である。ゴッホはこのカフェの様子を「夜のカフェ」に描いている。

 ゴッホの有名な絵や事件はこのアルルで起こっている。『ひまわり』,『アルルの跳ね橋』,『夜のカフェ』,『夜のカフェテリア』,『日没の種蒔く人』,『黄色い家』,『アルルの寝室』。ゴーギャンとの共同生活もアルルで始まった。そしてゴーギャンと袂を別ち,あの左耳を自ら切り落とすという凶行にはしったのもアルルでのことだった。

 ゴッホの絵は『ひまわり』に代表されるように黄色が強烈な印象を残す。その黄色をもっとも多用した時期がゴッホのアルル時代だった。黄色を重ねに重ねて描いた作品にはゴッホの「これでもか」という感情の塊である。それだけに正直見ているとしんどくなってくる。従って私はゴッホが苦手である。それでも『夜のカフェテリア』の黄色は温かみをおぼえて心地よく,ゴッホの中では好きな作品だ。『夜のカフェテリア』の方は現在でもカフェ・ファン・ゴッホとして営業している。

 ラマルティーヌ広場から真っ直ぐ南にいくとローマ時代の円形闘技場がみえてくる。駅からここまでは10分ぐらいのところだ。アルルにはローマ帝国期の大規模な建造物が数多く残っている。円形闘技場をはじめ,円形劇場,公衆浴場,城壁などそれだけローマにとって重要な拠点であった証拠である。公衆浴場はあのコンスタンティヌス大帝がこの町を気に入って作らせた。現在でも闘牛やコンサートに利用されているという。さぞかし雰囲気のある会場であろう。

 次のアヴィニョン行きの列車が約1時間後にくるのでアルルの観光はここまでにして駅に戻ることにした。ゴッホが好きな方は1日十分に過ごせる町だから,ゆっくりと散策するのをお勧めする。