You ain't heard nothing yet!

ある社会科講師の旅の回想録

You ain't heard nothing yet!(お楽しみはこれからだ!)

AK47とM16~ベトナム紀行㉑~

 クチでは実弾射撃を体験できるコーナーがある。面白いのはAK47とM16の両方が置いてあったことである。AK47,すなわちカラシニコフはソ連製のアサルトライフル(突撃銃)。ソ連のミハイル=カラシニコフが設計し,1949年に配備された。部品が少なく扱いやすく,しかも耐久性が強く,さまざまな悪条件下でも使用可能。ジャム(弾詰まり)も少ない。汎用性が高いため上にコストがM16の約半分であるため,世界中あらゆる戦地で現在(改良型を含む)まで使用されている名銃である。

 『AK-47 最強の銃 誕生の秘密』(2020)というロシア映画がある。ミハイル=カラシニコフのAK-47開発秘話を映画化したものでこの銃の性能がよくわかる。戦争ものであるが,戦闘シーンも死者もほとんど登場しない。戦争の暗さのないむしろ明るい作品であるが,ロシア(当時ソ連)の優秀さを示すプロパガンダ的要素は否めない。

 映画の中で,カラシニコフは改良に改良を重ね,AK-47を完成させる。操作性を追求するため,部品の数を極力減らし,水につけ,砂まみれもジャムをおこさない。その実験の様子も描かれている。ベトナム戦争では,北ベトナムや南ベトナム解放戦線に大量のAK47がソ連によって送り込まれた。AK47を担いだベトナム人女性の当時の写真をよくみることがある。つまり一般女性でも扱える銃ということだ。

 一方でM16を一般女性がかついでいるシーンを世界のどこを探してもみかけることはない。M16はアメリカ軍が誇る軍用銃で,現在でもその後継モデルがアメリカをはじめその同盟国で主力銃として使用されている。アーマライト社のユージン=ストーナーが開発したことから,こちらは社名をとって通称アーマライトとよばれている。現在はアメリカの大手銃器メーカー:コルト社がその製造を請け負っている。M16はAK47と比べバレル(銃身)が長く,弾の口径が小さいため,射程距離が長く,何と言っても軽い。ただし部品が多くメンテナンスが面倒で,その分故障も多い。過酷な環境に弱く,本格投入されたベトナム戦争でも不具合が多数報告された。イラク戦争でも砂によるジャム(装填・排莢不備)が頻発したという。

 M16を駆使する人物にデューク東郷こと「ゴルゴ13」がいる。超A級スイパーであるゴルゴがなぜM16を愛用するのか。コミック第149巻(リード社)『激突!AK-100 vs M-16』(さいとうたかを)で,彼はAK47をモデルとしたAK-100と激突する。砂漠での戦いに勝利したゴルゴはAK-100の開発者にこういう。

お前の開発したAK-100は,五十年後でも名銃として残るだろう・・・だが,M-16にはそれまでの”命”はない・・・

AK-100をこう評した上で,M16を使い続ける理由をこう言った。

俺は,一人の軍隊だ

 ゴルゴは長距離狙撃のプロであると同時に,ときには多数を相手に戦うことがある。狙撃と乱戦を同時にこなせるM16の利点を一言で言ってのけた。しびれる。冷戦終結後,カラシニコフとストーナーはアメリカで談笑したという逸話がある。このような歴史的ライバルが実世界で対面したという話もまたしびれる。

AK47(モデルガン)

M16(モデルガン)