You ain't heard nothing yet!

ある社会科講師の旅の回想録

You ain't heard nothing yet!(お楽しみはこれからだ!)

ジロラモ=サヴォナローラ~ドイツからイタリアへ㉞~

 ここにサヴォナローラという修道士が登場する。ジロラモ=サヴォナローラは,ロレンツォ存命中からフィレンツェで説教をおこなっていた。その内容は政治と信仰の腐敗,つまりはメディチ家への批判である。ロレンツォの死後,着実に信奉者を増やしていったサヴォナローラはフィレンツェ市民にその栄華の廃棄を求める。イタリア版「文化大革命」とでもいおうか,ルネサンス粛清の嵐が吹き荒れる。あのボッティチェリですらこの革命に身を投じた。

 そこへフランスがイアリアへ侵攻する。メディチ家はフランス政策を誤り,その軍隊が市内に入場した。サヴォナローラはフランスを自らの後ろ盾としてフィレンツェ政府を支配した。神権政治の始まりである。豪華な工芸品や美術品はシニョーリア広場に集められて燃やされた。歴史上「虚栄の焼却」とよばれる。当然,メディチ家は追放されることになった。ロレンツォの息子,当時のメディチ家当主であったピエロは逃亡生活の中で死んでいく。それと同時にメディチ銀行も破綻した。マキャヴェリの『フィレンツェ史』の締めくくりは,これらのことを意味していた。

 フランスとサヴォナローラに対抗したのは時の教皇アレクサンデル6世であった。スペインのボルジア家出身のルネサンス教皇である。サヴォナローラにはアレクサンデル6世が伝家の宝刀「破門」で対抗し,フランスには息子のチェーザレ=ボルジアが政治・軍事面で対抗する。チェーザレ=ボルジアはマキャヴェリが理想的な君主として『君主論』で論じた人物である。チェーザレとはカエサル(「皇帝」という意味もある)のイタリア語読みである。

 やがてフィレンツェでのサヴォナローラの権力に陰りが見え始めると,市民や共和国はサヴォナローラを火あぶりにした。サヴォナローラ亡きあとのフィレンツェに戻ったミケランジェロは,あの『ダビデ像』作製する。少しずつフィレンツェはかつての繁栄を取り戻しつつあった。