You ain't heard nothing yet!

ある社会科講師の旅の回想録

You ain't heard nothing yet!(お楽しみはこれからだ!)

ニューヨーク逍遥④~タイムズ・スクエア~

 七番街を北上すると,やがてマンハッタンを斜めに横切るブロードウェイと交差する地点にでる。タイムズスクエアである。20世紀初め,ニューヨークタイムズの本社ビルがあったことからこう呼ばれる。新聞社があったことからスクエア(広場)を囲む建物の外壁には,世界中の大企業の広告や電光看板が所狭しと掲げられており,ニューヨークの臍,「世界の交差点」とでもいうべき場所である。

 私がここを訪れたのは1992年であるからまだ日本のバブルの余韻が残っていたころである。周囲の広告には日本企業のものが多く,アメリカの企業のものといえば「Coca cola」ぐらいではなかったかと思う。もっとも当時日本企業の広告ネオンはニューヨークのみならず世界中いたる街の夜を彩っていた。

 Panasonic,TDKなどかつては「Japan as No.1」を誇った大手電機メーカーのビルボード(看板)が立ち並ぶ中,堂々とワン・タイムズスクエア(ニューヨークタイムズ本社があったスクエアの顔とでもいうべきビル)の中央にSuntoryのウィスキーが腰を据えていたのには,同じ大阪出身の私としても何だかいい気分であった。


 『ステイン・アライブ』(1983)という映画がある。ジョン=トラボルタの出世作『サタデーナイトフィーバー』(1977)の続編である。ブロードウェイのスターを目指す若者の青春映画というもので,私はほとんどその内容を覚えていないのだが,監督がシルベスター=スターローンという意外性とビージーズのナンバーといくつかの振付(結構有名です),そしてエンディングシーンだけが強烈に記憶している。

 話は少しそれるが,ビージーズの曲には「ナイト・フィーバー」や「ステイン・アライヴ」のようなハードなダンスナンバー以外にも男三兄弟がつくったとは思えない実に優しい,甘く切ない曲がある。「メロディ・フェア」(映画『小さな恋のメロディ』の主題歌)や「若葉のころ」,「愛はきらめきの中に」などがそうである。ABBAやビートルズにはこのような双極性はない。「ステイン・アライブ」や「愛はきらめきの中に」が全米1位を獲得しているのは,アメリカ人の中にある二面性を象徴しているのかも知れない。

 横道にそれついでに,少し前に『フラッシュダンス』(1983)のリバイバル上映を見に行った。こちらはプロのダンサーを目指す女性の物語だが,その結末が昔見た自分の記憶と違ったのには唖然とした。私の記憶ではヒロインはオーディション(この場面のダンスが見せ場)に不合格になるはずで,それでもめげずに明日に向かう姿で終劇。その前向きな姿がいわゆるハッピーエンドだったのだが,実際は全くの逆。合格するのである。私はもう50歳を過ぎたが,大いなる記憶違いに観劇の後,心地よさどころか,気落ちして帰宅したのであった。齢のせいなのか,ダンス映画に対する興味の薄さか。

 話は戻って映画『ステイン・アライブ』のエンディングである。主人公のジョントラ=ボルタがタイムズスクエアを後にしてフェードアウトしていく。画面にタイムズスクエアとそこに映し出された広告のネオンだけが残る。天下のコカ・コーラに乗りかかるようにして「MIDORI MELON LIQUEUR」の文字が。ミドリはサントリーが開発したメロンリキュールで,私は試したことはないが,「世界に誇るリキュール」だと昔よく通ったバーのマスターが話していたのを思い出した。私が訪れたのは映画公開から約10年後のことだが,やるなサントリー,やるなスターローンである。

こちらがそのエンディング↓


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