You ain't heard nothing yet!

ある社会科講師の旅の回想録

You ain't heard nothing yet!(お楽しみはこれからだ!)

ニューヨーク逍遥⑦~ビートルズの想い出~

 ダコタハウスを日本でも一躍有名にしたのは,歴史的価値ではなく,やはりビートルズのメンバー,ジョン=レノンが射殺された事件であったろう。1980年12月8日月曜日午後10時50分。ジョン=レノンは当時オノ=ヨーコとこのマンションで生活しており,帰宅したところマンションの入り口で銃撃された。犯人はデヴィッド=チャップマン。ジョン=レノンの狂信的ファンであったという。

 この日の日付は真珠湾攻撃と同じだったからよく覚えている。犯行時刻と曜日,そして犯人の名前まで憶えているのは,南こうせつが『帰郷』というアルバムの中で,ジョン=レノンを追悼した『9グラムの鉛』という曲があったからである。

 リンカーンセンターでブロードウェイを離れ,9番街を上り,72番ストリートをセントラルパークに向うと公園に向かい合ってダコタハウスが見える。ダコタハウス正面の通りを渡ってそのままセントラルパークに入るとストロベリーフィールズという一画がある。ジョン=レノンを追悼したサークル状のモザイクタイルがはめ込まれており,中心に「IMAGINE(イマジン)」と文字が刻まれている。

 ストロベリーフィールズはビートルズ時代の代表曲「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」から,そして「IMAGINE」は解散後のジョンの代表曲である。

 高校時代,私はフォークソング部に所属していた。中学からフォークギターを弾いていた私は,高校入学後の新入生歓迎会なる催し物で,フォークソング部部長がフォークギター一本で弾き語りしたビートルズの「Let it be」に魅かれてこの部に入部した。ビートルズといえども私の世代では知る者も少なく,フォークギター一本の弾き語りという世代でもなく,最初から入部したのは私一人であった。当時,エレキギターは学校側にすればまだ「不良」のイメージがあったようで,アコースティックの楽器ならということで認められていたサークルであり,4畳半に満たない,立ち上がると頭をぶつける屋根裏部屋があてがわれていた。吹奏楽部と合唱部は音楽室であったが,これぞフォークソングという待遇には不満などなかった。かぐや姫の名曲『神田川』に「三畳一間の小さな下宿」という歌詞はフォークの鏡だ。

 放課後,休み時間はもちろん,時には授業中も入り浸っていたが,そこには必ず学年が1つ上のM先輩(部長)がいた。「ビートルズのことならMに聞け」といわれるぐらいビートルズの曲を難なく弾きこなした。私はどちらかというとジャパニーズ・フォーク派であったが,M先輩の影響でロック(ロックンロール)のイロハを知った。特に何をという訳ではない。個人的な会話など何一つ記憶していない。ただ彼は立てば頭を打つほどの狭い空間で,私と向かい合ってギターを弾いていただけである。

 私の高校最後の舞台となった文化祭で「Let it be」の弾き語りをした。このときはソロではなく,後輩A君にピアノの伴奏を頼んだ。私の音楽三昧の高校生活は,「Let it be」に始まり,「Let it be」で終わったわけである。

 少し思い出話になったが,私もM先輩もビートルズの話はしたが,ジョン=レノンのことは語らなかった。なぜだろう。M先輩の心の内は分からないが,私にはジョン=レノンは宗教家過ぎた。ジョン=レノンは無宗教として知られるが,無宗教という名の宗教家のようでもあった。その突然の死も含めて。それが私がジョン=レノンを敬遠する大きな理由である。(オノ=ヨーコがどうも・・・というのもある。)

「Image」はその明解な歌詞と優しいメロディで,今でも世界中の人々から愛される平和の唄であるが,私はあまりいい曲だとは思っていない。それより「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」の方がずっといい。

Living is easy with eyes closed
Misunderstanding all you see
It’s getting hard to be someone
But it all works out
It doesn’t matter much to me

(目を閉じたまま生きるのは簡単さ

見えるものはすべて誤解さ

それなりの人になるのは難しいけど

すべてうまく行くさ

僕には関係ないけどね)

 ストロベリーフィールズ(フィールドとも)はジョン=レノンが育ったリヴァプール郊外の孤児院。ジョン=レノンの子どものころの遊び場だったらしい。この曲の方がずっといい。ずっと美しい。(ジョン=レノンファンのみなさんごめんなさい)

「僕には関係ないけどね」

もののあはれというやつだ。


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