かつてシャルル=ド=ゴール(ロワシー)に着いた旅行者は,パリに用はなくとも一旦パリに向わなければならなかった。今はパリからTGVなどの高速鉄道が空港を経由しているので,空港からパリ以外の各地へと直接向かうことができる。パリ市内へは,ホテルの場所や荷物にもよるが,もっとも安く済むのはRER(高速郊外鉄道)のB線を利用する方法だ。かつての空港駅は今と比べると驚くほど質素であったと記憶している(1991年当時)。日本でいうと急行列車はまず停車しないという程の駅舎であった。私はユーレイルパスという乗り放題パスをよく利用したものだが,RERのB線はこの空港駅からパリ北駅までをSNCF(フランス国鉄)が運営しているため,ユーレイルパスが有効であった(他線は不可)。そのため私のパリはいつも北駅から始まるのである。
パリ北駅は文字通り,パリの北部に位置するターミナル駅で,パリから北への路線が延びている。パリの北にはリールがある。リールで分岐してさらに北に向うとカレー。カレーからはドーバー海峡(ユーロトンネル)をくぐってロンドンへ。またリールから東に向えばベルギーのブリュッセルへ。北駅の地上ホームは長距離国際列車で占拠されており,赤の車両はタリス(ブリュッセル・アムステルダム往き),黄色はユーロスター(ロンドン往き),銀色がTGV(フランス北部長距離)などカラフルに高速列車が並ぶ壮観な光景である。
パリの治安は北部ほど悪いとされる。特に北駅と東駅周辺は近年,イスラム系移民との摩擦が激しく,宿をとるにはお勧めしない。パリに行くことがあっても10・11,18~20区といった北東地区には安いホテルがあっても泊まらないようにとアドバイスしておこう。2015年,襲撃事件がおこったシャルリーエブト社もパリ11区にあった。
そういう私自身,若い頃一度北駅と東駅の間の安宿に宿泊したことがあった。ホテルの名前は残念ながら忘れてしまった。部屋の鍵が硬くて開け閉めしにくく,エレベーターはスケルトンだったことは覚えている。しかしながら朝食のクロワッサンは最高に旨かった。