You ain't heard nothing yet!

ある社会科講師の旅の回想録

You ain't heard nothing yet!(お楽しみはこれからだ!)

シャトレ駅~メトロ1号線⑩~

 シャトレ駅は知る人ぞ知る,『サムライ』(1967)という映画のワンシーンが撮られた場所である。題名から邦画っぽい感じはするが,正々堂々フランス映画である。アラン=ドロンが一匹狼の殺し屋に扮し,パリを舞台に殺しと逃走を繰り広げるハードボイルド・アクションである。

 殺し屋が地下鉄で警察を撒く追跡劇,シャトレ駅には当時ではおそらく最先端の動く歩道があった。私がはじめて動く歩道に乗ったのは,1990年,大学に通うために通った大阪梅田駅阪急17番街でのことであった。それより20年以上も前にもうパリには動く歩道があった。さすがパリである。この動く歩道の上を無表情の殺し屋アラン=ドロンが全力で走り去る。少し笑える。

 笑えるといえば,この映画の中で殺し屋が車を盗むシーンがある。その盗み方がありえないのだ。殺し屋はポケットから何と針金を通した鍵の束を取り出し,1つ1つ差し込んで合う鍵を探すのである。それが何と何回も試しているとぴったりはまる鍵があるのだから傑作である。殺し屋は盗んだ車で逃げのびる。断っておくがこの映画はコメディーではない。ハードボイルドである。

 ちなみに殺し屋を負う警察捜査本部の壁には前述の「テュルゴーの地図」が飾られていたのを覚えている。