You ain't heard nothing yet!

ある社会科講師の旅の回想録

You ain't heard nothing yet!(お楽しみはこれからだ!)

17歳の頃

 17歳,ロサンゼルスへの旅が運の尽きであった。帰国後,高3となった私は受験勉強どころではなかった。「そぞろ神の物につきて心を狂はせ 道祖神の招きにあひて取るもの手につかず」(『奥の細道』)と芭蕉はいったが,あれ以来新しい年を迎えるごとにそれは私にも表れる症状となった。

 17歳。1989年,私は本当にいろんなことを知り,体験した年であった。ただ一度だけ過去に戻れる年を選べるなら迷わず私はこの年を選ぶ。私のすべてが詰まっている年といっていい。当時,好きだったジャニス=イアンという女性シンガーソングライターがいる。『Love is blind』 は日本でも誰かがカバーしていたはずだが,私のお気に入りは『Will you dance?』。しかし大人になってからしみじみと名曲だなぁと思うのは,『At seventeen(17歳の頃)』 である。いい曲だから紹介したい。女の子向けの歌だが,こんな歌詞がある。

The world was younger than today

When dreams were all they gave for free

(今よりずっと未熟な世界に生きていた ただで手に入るものは夢だけだった)

 17歳,”I’ll always have my seventeen-year-old.”(私にはいつも17歳の思い出がある)とハンフリー=ボガート風にキザに言えばこうなるか。『カサブランカ』では” We'll always have  Paris.”(俺たちにはいつもパリの思い出がある)であったか。

 18歳の春,大学に無事進学した私は,19歳の春,シャンゼリゼのマロニエ並木を歩い ていた。パリである。