You ain't heard nothing yet!

ある社会科講師の旅の回想録

You ain't heard nothing yet!(お楽しみはこれからだ!)

リヨン駅~メトロ1号線⑬~

 メトロ1号線の旅,最後はパリ・リヨン駅である。リヨン駅のリヨンはフランスの地名。中部のリヨンや南部のマルセイユに向う列車が発着するためリヨン駅の名が着いた。

 リヨン駅もまた旅情をかきたてられる駅の1つである。北部のドーバー海峡の町カレーでイギリスからの旅行者を迎えてパリを経由する豪華列車には2つあった。オリエント急行とトラン・ブルー(青列車)だ。オリエント急行はパリ東駅(ストラスブール駅)を経由してトルコのイスタンブールにいたった。(現在はイタリアのヴェニスまでの短距離に縮小されている)

 日本でも一時英語読みでブルートレインとして走った列車があったが,本家はフランスのトラン・ブルー(青列車)。パリ・リヨン駅を経由して,向うは南仏コートダジュール地方である。トラン・ブルーもTGV(高速鉄道)が整備されるようになるとその姿を消していった。

 2つの列車には豪華寝台列車であるということのほかに,もう1つ共通点がある。アガサ=クリスティによって殺人事件が仕立てられたという点である。2つの事件はともに名探偵エルキュール=ポワロによって解決されている。名探偵といわれる探偵はたくさんいるが,ポワロほど旅好きな探偵はいないだろう。

 

 

 リヨン駅構内に入る。列車に乗るまで時間があれば,レストラン「ル・トラン・ブルー」に入ってみよう。青列車にちなんだ老舗フレンチレストラン。私も一度は入ってみたい店であるが,若造だったあのころ1人でフレンチレストランなど入れる勇気などなかった。機会があればいってみたいあこがれのレストランである。

 ホームには南仏行きのTGVのほか近郊列車も止まっている。オードリ=ヘップバーンの『昼下がりの情事』はコンコルド広場に始まり,クライマックスはこのリヨン駅のホームで終わる。最後にはヘップバーンはグレゴリー=ペック演じる大富豪にさらわれるように列車に乗り,ハッピーエンドとなるが,大富豪への憧れは夢で終えて欲しかった。