You ain't heard nothing yet!

ある社会科講師の旅の回想録

You ain't heard nothing yet!(お楽しみはこれからだ!)

プロバンスとラングドック

 フランス第二の都市マルセイユは,フランス最大の港湾都市でもある。日本ではちょうど横浜にあたりそうだが,姉妹都市になっているのは神戸である。紀元前6世紀には古代ギリシャ人の植民地として築かれた。その当時はマッシリア(マッサリア)とよばれた。ギリシャ人の次はローマ人の植民地となり,ローマでは植民地のことを属州=プロヴィンチアといった。属州にはローマ執政官(コンスル)経験者が次のキャリアとしてその地の総督の地位に就いた。フランス南東部はプロヴァンスという地域名で知られるが,プロヴァンスはローマの植民地(属州)がもともとの意味である。

 プロヴァンスに置かれた植民地=属州(プロヴィンチア)はガリア・ナルボネンシスと名づけられ,名前から想像がつくように州都はマルセイユのずっと西の,現在のナルボンヌに置かれた。ローマ亡きあとの中世,このあたりフランス南部はイベリア半島(スペイン・ポルトガル)を征服したイスラム教徒と接する地域となり,フランス北部とは異なる独立した文化圏が醸成される。キリスト教異端のカタリ派やオック語がその一例である。同様な例にスペイン北部からフランス南西部にかけてのバスク地方がある。

 オック語は現在でもフランス南部で使用されており,近隣諸国を含めると話者は80万人もいるという。フランスでは当然公用語扱いされておらず,その衰退が心配されている。プロバンスの他に南部フランスを「ラングドック地方」という表現をするが,ラングドックとはまさに「オック語(Langue d'oc)」という意味である。


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 オック語の民謡や詞の世界観を今も伝える男性コーラスグループ:

ルー・クワール・デ・ラ・プラーノ(Lo cor de la plana)。北アフリカやアラブの雰囲気も交じり合っている。