「世界一の空港を造ってやる!」と上品なフランス語でいったかどうかはわからないが,1964年,当時の大統領シャルル=ド=ゴールの肝煎りでこの空港の建設が始まった。パリ・シャルル=ド=ゴールといわれるが,正確にはパリにはなく,パリ郊外のロワシーという町にある。そのためパスポートに押される出入国のスタンプはROISSY(ロワシー) ・CDG(シャルル=ド=ゴール)となっている。
10年を要して開港したときには,ド=ゴールはこの世になく,ド=ゴール時代に首相として彼を支えたポンピドゥ大統領のもとで開港の日を迎えた。第二次世界大戦中フランスはドイツの占領下にあった。それでもロンドンに自由フランス亡命政府を樹立し,フランス国内のレジスタンスと共闘した英雄シャルル=ド=ゴール。その名を残す場所は数あれど,この空港が多くの日本人旅行者にとって彼の名に接する唯一の機会かも知れない。一度,母を連れてフランスに立ち寄ったとき,この空港の名前を教えてあげると,フランスの大統領の名前だと気がついた。母ですら彼の名前ぐらいはピンときたのである。