観劇街をぬけてブロードウェイをさらに北上する。セントラルパークの南西角,コロンバスサークルに突き当たる。これを越えてなおブロードウェイは続く。実の所ブロードウェイはマンハッタン島を北端まで突き抜け,本土内陸へと続いていく。
セントラルパークから遠ざかるように進むとリンカーンセンターという複合文化施設がある。セントラルパークより西側,ハドソン川までの一帯は文字通りウェストサイド(アッパー・ウェストサイド)とよばれる地区になる。反対側のイーストサイドと同様に高級住宅街として知られるが,リンカーンセンターやコロンビア大学などの存在によってウエストサイドは文教地区として発展してきた経緯があり,イーストサイドと比べると庶民的な側面がある。
かつてのウェストサイドが庶民的であったことが分かる映画に『アパートの鍵を貸します』(1960)がある。保険会社に勤めるしがないサラリーマンが上司の情事の密会場所として自分のアパートの部屋を貸す。主演は私の好きな三枚目俳優ジャック=レモン,監督はビリー=ワイルダー。ジャック=レモンがスパゲティーの湯切りにテニスラケットを使っていたのはまるでアメリカアニメのワンシーンであった。
もう1つ。ミュージカルの名作『ウェストサイド物語』(1961)。アメリカ版「ロミオとジュリエット」とも呼ばれるこの作品のオープニング,フィンガースナップから静かに始まるダンスシーンは確か,リンカーンセンターの近くであったように記憶しているが,その場所を特定するには至らなかった。
さらにもう1つ。『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)。可愛らしいタイトルだが,これはホラー映画。これは怖かったですねぇ。決して裕福とはいえない夫婦が,引っ越して来たアパートの周囲は悪魔崇拝者の溜まり場。やがてローズマリーは出産するのだが・・・。このローズマリー夫婦が越して来たアパートがダコタハウスとして知られる19世紀に建造されたマンション。ホラー映画の舞台に相応しいホーンテッド・ハウス(お化け屋敷)感あふれる歴史的建造物である。